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ゼンリンデータコム様の次世代サービスのコンセプト作成にゆめみのサービスデザイナーが併走

1.ご依頼の背景

ゼンリンデータコム様との出会い

弊社の曽根が2020年9月に、ビザスク様主催にて、『顧客起点の サービスデザイン~ユーザーインサイトの見つけ方とは~』というタイトルで講演をさせていただきました。

https://visasq.co.jp/seminar/service_design/

その講演では、2つの視点についてお話しさせていただきました。

1つ目は、現代においてモノからコトへという社会の変化のなかで、顧客にとっての価値がそのモノやコトの持つ『意味』へと移ってきており、求められるものが「役にたつもの」から「意味がある」ものへ移ってきているということ。

2つ目は、そういった「意味がある」ものを作り出す過程において、要件定義のプロセスに行動観察やプロトタイピング等の、人間中心設計やデザイン思考の要素を盛り込んで、体験を先につくり共創すること。

これらを実践していく併走パートナーとしての、ゆめみをご紹介させていただきました。

 

2.ゆめみが手助けしたこと

講演をお聞きいただいた企業様より多数のお問い合わせ、お引き合いをいただきました。
なかでもゼンリンデータコム様におかれては、人間中心設計を実プロジェクトへ応用がしたいとお問い合わせをいただきました。
なお、ゼンリンデータコム様ではすでに芝浦工大と産学共同でHCDの研究プロジェクトを実施され、これを自社のケイパビリティとしたいご要望をお持ちでした。

そこで、2021年1月に短期のワークショップを開催させていただき、事業への人間中心設計の活かし方をお伝えすることと、ゼンリンデータコム様社内での利用を念頭においた実行プロセスのご提供をさせていただきました。

 

人間中心設計プロセスによる、ワークショップの実施

新アプリコンセプトデザインを目的として、「HCDのプロセスの利用状況の把握と明示」、「要求事項の明示から解決策の作成」のパートを全4回のワークショップ形式で実施し、利用者を見つめて業務の中における価値の本質を探る取り組みとしました。

全4回は、このように計画しました。
まずはゼンリンデータコム様で実施済みのインタビュー発話データを共有いただき、利用者の利用文脈を把握したうえで、普段のユーザー体験のモデル化を行い、その体験価値を探索しました。

つぎにその体験価値を具現化するアイデアの発想を行い、体験のコンセプトの骨子を固めます。
最後に、利用者の利用体験全体をストーリーボードにして、実現するユーザー体験と利用文脈を誰もが見える形にしていきました。

全体を通じて、我々が今回のコンセプトを導き出すために取り組んだのは、まず何を解決するのか、根本の「解くべき問い」を考えることでした。

最初から一つの答えを求めるのでなく、
・答えにつながる道を洗い出し(拡散)
・どの道が答えにつながるか検討を繰り返します(収束)
「拡散」と「収束」は、次のような順番でおこないました。

 

1−1 ユーザー体験のモデル化と体験価値の探索

第一回では解くべき問いを見つけるための拡散のワークを行いました。 とにかく拡散することで、次のプロセス以降の議論を盛り上げます。 一番最初の読み合わせワークでは、すでに実施されていた想定ユーザーへのインタビュー発話データをもとに、書き出された発言を自身の体験と重ねて振り返ってみたり、発言から得られる気づきを共有しながら話をしていきました。

気になった話をグルーピングし、キーとなる『ユーザーの認知』について理解を深めます。その後、このユーザーへの共感を深めるために、ユーザーの情報(職業や生活や運転について)と、インタビュー発話から引き出した認知を組み合わせて、共感マップを用いペルソナを形成していきます。

ペルソナ形成は、プロジェクトメンバー間で、利用者についての「共通モデル」をもつことが目的です。 その目的をメンバー間で十分共通認識として持った上で、このユーザーが日々おこなっている行動を、時間軸でプロットしていきました。 行動については、インタビュー発話から抜き出したり、共通モデルからメンバーがそうだと感じたものを利用しました。

すると、現状のユーザーの行動ジャーニー、タイムラインとそれによる感情が見えて来ました。 これにより、ユーザー・生活者の行動と、その理由となるものの片鱗を、ワークショップの参加各チームがそれぞれ導き出すことができました。 この活動を通して、ユーザー・生活者の持つ価値観を浮かび上がらせ、すくい取ることができました。ここに、解くべき問いのヒントが隠れていました。

 

 


1−2 アイデアの発散とコンセプトの作成

第二回では解くべき問いを収束させたあとに、その解くべき問いをどのように解決するか、検討する準備を行いました。 第一回で現状のユーザーの行動ジャーニー、タイムラインとそれによる感情が見えてきたので、それを活用して、利用者の「理想の状態」を深堀りしていきます。 「理想の状態」を深掘りするため、バリュープロポジションキャンバスを用いて、ユーザー・生活者の悩みである「ペイン(下図①)」と 願望である「ゲイン(下図②)」を書き入れました。 この時「ペイン」と「ゲイン」は、第一回で作成した「ペルソナ」と、「見えてきたユーザー・生活者の行動と価値観」を基に考えて書き入れています。

「ペイン」と「ゲイン」が書き入れられ、「ペイン」が解決し、「ゲイン」が叶なった状態とはどのような状態であるか、つまり「理想の状態」はどんなものか、より具体的にイメージすることができました。 こうして見えてきた「理想の状態」に対して、どのようにユーザー・生活者を理想と近づけていけるか?を解くべき問いとして、収束させることができました。

こうして収束された、解くべき問いである「理想の状態」にどのようにユーザー・生活者を近づけていけるか?をこれからアイデア発散するのですが、その前に How mihgt we を用いて問いを純化させることでディスカッションをより活性化するための準備をしました。 問いを純化させる、「どうしたら〇〇できるだろうか?」という文章をいくつも作りました。作られた文章は、現状と理想とのギャップに対して「良い面を伸ばす」「悪い面を除去する」「反対を探す」などそれぞれ違った視点を取り入れられた文章になっています。作られた文章の中から『「理想の状態」にどのようにユーザー・生活者を近づけるか?』を解決するアイデアの発散の方向性を絞り込みました。

そうすることで、アイデア発散の時にアイデアが抽象的になることを防ぎ、より具体的なアイデアのディスカッションをすることができました。 こうして、ディスカッションの場の準備が出来ました。

 

 

 

1−3 実現するユーザー体験と利用文脈の可視化

第三回ワークショップはアイデアを拡散し、アイデア同士の統合と、ブラッシュアップを行いました。

最後にまとめワークでアウトプットされたアイデア群を共通のコンセプトでまとめ、UIの設計に取り掛かるための準備をしました。 第二回で準備した How miht we?の問いに答える形で、ブレインストーミングを行いました。 またこの後にUXコンセプトツリーを作成するため、ここではバリュープロポジションキャンバスに書かれている「ペイン」を解消するアイデアと「ゲイン」を叶えるアイデアを「機能単位」にしてアイデア発散をしました。

またブレインストーミングの際に How Might We?で作られた問いを1つに限らずいくつか使うことで、アイデアが抽象的になるのを防ぎつつ、様々な違った着眼点からアイデア発散をすることができました。

アイデアを大量に出したあとは、機能単位で書き出されたたくさんのアイデアにバタフライテストをし、メンバー間でもっとも実現したいアイデアを抽出しました。 そして絞られたアイデア(機能)を1つのサービスとしてまとめ上げるためにUXコンセプトツリーを用いてUXコンセプトを考えていきます。

絞られたアイデア(機能)を、一番下の「具体提案」に並べます。 その後「キー満足要因」「どうやって実現するか」「本質的なニーズ」をそれぞれのアイデアから登るように順に書き込みました。 最後に全ての「本質的ニーズ」を見比べて、1つのサービスとして目標とする体験価値を「UXコンセプト」に書き入れます。 こうしてアイデア達を共通の『体験価値』単位で見比べ、サービスとして1つの体験価値・コンセプトにまとめることができました。

最後に、最も重要な部分が待っています。 ここまで考えてきたアイデアに対して、ユーザーが生活のなかで使う余地はあるか、使う価値があるか?を確認していくことです。 第1回で作成したジャーニーマップの上に「どの場面でこのサービスが使われるか?」「どのような操作が行われるか?」をマッピングしていきます。

このように「どの場面でこのサービスが使われるか?」「どのような操作が行われるか?」が分かることで、ワイヤーフレームを検討するための作業が、効率化します。

ここまでで、ワイヤーフレームの検討の足掛かりが出来、いくつかのコンセプトまとめが出来上がりました。 最終的に、もたらしたい結果(コンセプトのコア)と現状の課題・困りごとに対して、もたらす結果を紐付けていきました。 新型コロナ感染症が広まるさなかでの実施となったため、オフライン対面での実施予定が、急遽直前にオンラインで実施となる状況もありましたが、結果として、HCDを利用したことのない部署からも参加いただけたことにより、UXを観点として新たなコンセプトをゼンリンデータコム様自らで導き出していただくことができました。

 

 

3.プロジェクトに対する評価

全4回のワークショップ終了後に、ふりかえりの回を実施させていただきました。その中で、このようなフィードバックをいただくことができました。

ユーザインタビュー(定性調査)をまとめる運用があり、そこでも人間中心設計思想を取り入れ、対象母数を増やして結果を見てみたい

データを基にアイデアを出している現状から新しいシェアや視点、顧客を得るためのアイデア策を練る方法として利用したい

この手法で新規事業のアイデア発想をしたい

全く新しい視点でアイデアを創出できた

共感からコンセプトまで一貫したアイディアが生まれた

 

これにより、今後のサービス企画に向けて、コンセプトをプロジェクトの中心に据えることが、ゼンリンデータコム様とともにできたと感じます。

ゆめみは御社の代わりにモノを作ります!ではなく モノと、それを生み出すチームを一緒に作ります。

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